2009年6月9日火曜日

離婚の効果5

 子供がいる夫婦が離婚する場合、最も問題となるのが、離婚後未成熟の子の養育に必要な費用を、父母双方がどのように分担するかです。ただ、ここでは親権の所在と養育費分担額決定との関係も問題となります。この点に関しては、親権者が優先的に分担するという判例もあります。
 しかし、親である以上、親権の有る無しにかかわらず、分担能力に応じて分担しなければならないと考えるべきでしょう。
 また、定まった養育費の履行確保の方法も問題となる場合があります。離婚して時が経ち、一方が新しい家庭を持つようなことになると、新家庭の生活の維持費に精一杯で、養育費の支払いに手が回らない状態になることがあるのです。このようなとき、当事者間で収拾がつかなければ、すぐ裁判ではなく、家事審判を申し立て、履行勧告や履行命令を得るべきでしょう。

2009年4月30日木曜日

離婚の効果4

 離婚する場合、親権者とは別に監護者を決めることができます。子の福祉を第一にして親権者を定める現行法の下では、親権者とは別に監護者を定める必要性は少ないが、第三者を監護者に指定すべき場合には意義があります。
 親権者と別に監護者を定めると、親権のうち監護権が独立し、親権は財産管理権のみを内容とすると解されます。代理権は財産管理権の一内容とされますが、監護権の行使に必要な範囲での代理権は監護者に属すると解されます。また、子が代諾によって養子となる場合には、監護者は同意権を有します。
 監護権を行使するためには、子を自己の支配下に置く必要がありますから、親権に基づく子の引渡請求と同様に、監護権に基づく子の引渡請求が認められます。
 また、子を一方の親だけが監護するとなると、他方は子に会う機会が奪われることになりますから、その親に子と交渉をもつ権利、すなわち面接交渉権を認めなければなりません。

2009年4月28日火曜日

離婚の効果3

 離婚においては、子をめぐる諸問題があります。
 婚姻中共同行使してきた親権を、離婚後も共同で行使するのは困難を伴うため、協議離婚をするときには、単独親権とし一方を親権者と定めなければなりません。協議が不調・不能の場合には、家庭裁判所が審判によって定めますが、その前に調停を経るのが通常です。
 裁判離婚の場合には、通常裁判所が離婚とともに親権者について判断します。いずれにしても、父母のどちらが監護者に適するかという観点から判断すべきでしょう。
 

2009年4月23日木曜日

離婚の効果2

 離婚した当事者の一方は、他方に対して財産の分与を請求することができます。当事者間で協議不調や協議不能の場合には、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができます。ただし、離婚してから2年以内にしなければなりません。
 この場合、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうかや分与の額・方法を定めます。
 財産分与と慰謝料請求との関係について、判例は、「財産分与請求権は、必ずしも相手方に離婚につき有責不法の行為のあったことを要件とするものではなく、慰謝料請求権とは本質を異にし、権利者は両請求権のどちらかを選択して行使することもできる」としています。
 また、「財産分与がなされても、それが損害賠償を含めた趣旨と解せられないか、そうでないとしても、その額及び方法において、請求者の精神的苦痛を慰謝するに足りないと認められるときは、別個に慰謝料を請求することができる」とも判示しています。
 結局、例えば、相手方の浮気により精神的苦痛を伴って離婚する場合、慰謝料を財産分与の中に含めて額を決めてもいいし、財産分与に慰謝料が含まれていないときには別個に慰謝料の請求ができるということです。

2009年4月20日月曜日

離婚の効果1

 離婚によって婚姻の効果はすべて消滅しますから、婚姻によって氏を改めた者は婚姻前の氏に復するのが原則です。ただ婚姻期間が長いとその氏が定着しますから、離婚から3箇月以内に届出をすることによって離婚の際に称していた氏を称することができます。
 未成年者が婚姻をすると、これにより成年に達したものとみなされますが、この成年擬制が離婚後もなお存続するかについては争いがあります。
 夫婦の協力扶助義務について、履行していない部分があれば履行責任は残ります。また、婚姻費用の分担義務や日常家事債務の連帯責任は残りますから、離婚してもこれらの債務は履行しなければなりません。通常は財産分与のところで清算されるでしょう。

2009年4月16日木曜日

離婚の成立

 離婚には、協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚があり、最も多いのがやはり協議離婚である。両当事者の離婚意思の合致に基づいて届出をすることによって成立します。勿論ここでは、裁判離婚のような法定の離婚原因は必要とされません。両者の離婚意思の合致があればいいのです。
 調停離婚・審判離婚でも法定の離婚原因は必要ではありませんが、自分の主張を裁判所で認めてもらうには、それなりの合理的な理由が要求されます。
 裁判離婚では、離婚原因として、不貞行為・悪意の遺棄・3年以上の生死不明・回復の見込みのない強度の精神病・婚姻を継続し難い重大な事由が挙げられています。婚姻を継続し難い重大な事由とは、性格の不一致あるいはその結果である愛情の喪失、性生活の異常、家庭内暴力・虐待・重大な侮辱、夫婦の一方と他方の親族との不和、悪意の遺棄に至らない程度の同居協力扶助義務違反、回復の見込みのない強度の精神病に至らない精神病などがあり、婚姻が破綻しているかどうかが総合的に判断されます。

2009年4月14日火曜日

有責配偶者からの離婚請求

 有責配偶者からの離婚請求とは、例えば、浮気をしておきながら他方に対して離婚請求ができるかというような場合です。
 従来、判例は、有責配偶者からの離婚請求を認めていませんでした。自分で非のある行為をしておきながら、離婚請求を認めるのはモッテノホカというわけですね。しかし、最近の判例は、限定的ですがこれを認めています。「有責配偶者からされた離婚請求であっても、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び、その間に未成熟の子が存在しない場合には、相手方配偶者が離婚により精神的・経済的に極めて過酷な状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情の認められないかぎり、有責配偶者からの請求であるとの一事をもって許されないとすることはできない。」(最判昭62,9,2)
 実質的に婚姻が破綻しているのに婚姻を継続させる不合理さと無責の配偶者及び子の保護との調和を図ったものといえます。

2009年4月9日木曜日

初めに

 今日から離婚について考えて行きたいと思います。
 単に離婚協議書の書き方というのではなく、離婚全般
について考えて行きたいと思っています。
 全国の離婚件数は、平成12年から7年連続して25万件を超えています。
 平成19年度における離婚申し立て件数は、約6万5千件。女性からの
離婚申し立ては、約4万6千件であり、原因別にみると、性格の不一致(45,6%)、
暴力(29,1%)、浮気(26,2%)となっている。一方、男性からの離婚申し立ては、
約1万9千件であり、原因別では、性格の不一致(62,2%)、浮気(17,8%)となっ
ている。
 離婚する場合、協議離婚が多いものの、子供のためと我慢している方や、浮気を
していても将来の経済的事情を考えて離婚に踏み切れないで悩んでいる方も相当
おられるのではないかと思われます。